何かをきっかけに (魔女の旅々の ED がすごいよくて、それで好きなアニソンなんだったかな…みたいな感じで) ふと思い出して少女終末旅行の 11 話 12 話を観たが…いや…とても…。勢いで Kindle 版原作コミックも買って 1~6 巻一気読みしたが…とても…。おれは考察のしがいがある作品がとても好きなんだ…。けものフレンズみたいなポストアポカリプスものも大好きなんだ… (アニメ公式サイトはうっかりディストピアってキャッチコピー使っちゃってるけど)。
ネタバレのない軽い触りの部分の良さを語る
主人公ふたりがかわいい!かわいい!かわいい!(画像貼るのは (法的にも技術的にも) めんどくさいので) どれくらいかわいいかはとりあえず公式サイト http://girls-last-tour.com/character/ を見てくれ!少女終末旅行はとてもゆるいタッチで描かれる作品なのだ!終末世界なのに!どうして!残酷すぎる!アニメもそうだが原作はもっとゆるゆるだ!
人間キャラの作画が近年世間一般でいわれる「萌え」からはやや離れたゆるゆるほのぼのデフォルメタッチな一方、チトとユーリの乗るケッテンクラートをはじめとして機械や建造物といった無機物はハードでリアルに描かれている。そう、有名な「かわいい女の子がリアルな機械類をなんとかする」パターンである。著名 (だけどおれは詳しくない) なのはガルパン、範囲を広げれば艦これとかも含まれると思われるこのジャンルは、女の子と機械を同時に浴びることでかわいいとかっこいいを同時に摂取することができ、さらにそのギャップを楽しむことができる 1 度で 4 倍おいしい化学反応である (というか女の子 × 機械に限らずもっと一般化して考えることもできる)。少女終末旅行は「萌え」からちょっと離れたかわいさをもつ作品なのでさらにちょっと違っているかもしれない。
あとこれは個人的な趣味なのだがふたりの着てる服もかわいい。最近の (に限らず) 女子のキャラ造形で肌色成分が重視されすぎている。しっかり身を守れて寒さをしのげてかつかわいいデザインの服ばっか着てるアニメとかもっと流行ってほしい (実はもうあって、ゆるキャンって言うんですけど)。
深遠な世界観
もう一回言うけどおれはポストアポカリプスものが好きで、ポストアポカリプスものがとても好きである。新型コロナウイルスで休校を満喫していた頃このような発言も残しているぐらいに好きである。
文明が崩壊した2024年の日本を「東京2020」のポスターがデカめに映るカメラワークで歩きたい
— Mominis (@MominisJ) April 23, 2020
文明が崩壊した世界、ふたりが往くのは階層構造になった廃都市。人間が生活している都市としてはすでに滅びており、ところどころ生活の痕は見えるものの人間は死体ひとつさえほとんどまったく見かけることはない。使う人間がいなくなっても、電気、ガス、水道といったインフラはまだところどころ生きていて、チトとユーリはそれを利用して進んでいく。「けものフレンズ」も人間がかつて存在した世界での二人旅、という点で共通しているが、もともと自然保護区のような施設だったらしいジャパリパークに対しこちらは本当に街しかない世界である。
文明が崩壊しているので画面の手前の我々と違ってチトとユーリは知らないこともある。そもそもユーリは「まともに読み書きもできない」とチトに言われている。そのチトが読み書きできるのも簡略化したひらがなっぽい文字で、古代の構造物に多く書かれている「危険」「静粛」といった漢字やたまに見かけるアルファベットで書かれたものは理解することができない。そう、我々は「危険」と書かれた札を無視して危険な目に遭うふたりを何度も目撃することになるのである。
曲が神
OP「動く、動く」が天才。ED「More One Night」も天才。劇中音楽もたのしいのから神秘的なものまで揃っている。神要素しかないのか?
ネタバレあり
間接的に表現する力が高すぎる。原潜で出会ったヌコの親玉 (エリンギ)。彼ら (彼女ら?) は「我々は最上層以外ほとんどの場所を観測しているが 現在生きている人間は君たち二人しか知らない」と言った。ふたりがその旅路で出会ったカナザワとイシイは…?
実はカナザワとイシイにはある共通点がある。自らの乗り物を失っている ということだ。ついでに生きる目的も失っている。カナザワはバイクに乗っていたが、チトとユーリに出会う前 (どれくらいかはわからないが…) に壊れてしまっている。あたりの地図を描いて生活していたが、上層に登るエレベーターから落ちかけて失くしてしまった。イシイは飛行機を作って外の世界に飛び立つことを目的にしていたが、離陸した後に空中で翼が折れて墜落してしまう。
そしてチトとユーリも例外ではない。最終第 6 巻の44話で愛車のケッテンクラートは寿命を迎えてぶっ壊れ、以降は終幕までふたりは自らの足で進むことになる。壊れたケッテンクラートを必死に直そうとするチトが本当に…。それをそっと慰めるユーリも本当に…。徒歩行軍になって、ふたりはケッテンクラートがあったからこそここまで生き延びてこられたことを悟るのだった。チトは重すぎて持っていけない本と毎日つけていた日記を焚べていく。そして最上層にたどり着く…。
この作品の人間はみな乗り物に乗っていた。しかしそれを完璧に修復したり新しく作ることはもう叶わないのだ (本編中では、ケッテンクラートや飛行機など機械的なものでさえ)。乗っているといえば古代人のインフラも同じである。
個人的に印象的なところ
作品中気になることとして、真円と直線によるモチーフが多いことがある。1 巻には登場しないが、2 巻以降エリンギ像とタイミングを同じくして見かけるようになった。たとえば 9 話ではエリンギ像が複数登場し、カメラの表示に例のモチーフっぽいものが出現している。10 話「寺院」で訪れた寺院はエリンギ像が大量に設置されており、さらにチトの読める魔改造ひらがなで書かれた「今からおよそ 400 年前に建つ…3 人の神を祀る…」という解説文がある。この「今」はチトたちの今ではなくもっと昔だろうが、魔改造ひらがなが使用されていた年代なのでそう古くないだろう。その碑には直線と真円のモチーフが描かれている。神の祀られている大部屋にはエリンギ像 3 体、そして例のモチーフ。ここのモチーフに三角形が多いのは三人の神だからだろうか?この後ユーリは「ちーちゃんが神様なのでは…?」とか「むしろ私が神なのでは」とか言い出すのだが、中央の像はどことなく人間の女の子に似てるような…。
19 話「記憶」で訪れた墓地にもエリンギ像。墓の名前は魔改造ひらがなに似ているが若干形が違う (デザイン違いというより時代が異なるのでは?)。22 話「技術」では火気厳禁タンクの横や水槽の横、出入り口の横、そのへんの壁など至るところに例のモチーフが描かれている。こちらは円が多め。アニメではロボット (CV:梶裕貴) とクソデカ解体ロボットの交信でもこのモチーフが現れている。
31 話「接続」では映像で 3 人組の女子学生が登場する。彼女らは機械について研究しているようだが、つまりその当時ですでにその機械に対する知識が伝わっていないということだろう。彼女らはフライドポテトを食べている…イモ…。
33 話「水路」では「SAKANA」と書かれた缶詰が。魚の絵が描いてあるのでさかなを意味しているのは理解しているようだが、「6 文字なのに『さかな』と読む」ことに疑問を呈しているのでラテン文字が読めるとかではなくそもそも子音字と母音字を組み合わせて読むアルファベットの概念を知らないのだろう。
35 話「美術」の美術館の解説は漢字混じりの日本語で書かれている。その中にちょっとシンボルめいた絵があったり、ワイヤーが外れて倒れていた絵には三角形入りのシンボルと 10 話の神さまも描かれている。左にはヌコっぽいのとか。ユーリが魚とふたりの絵を描いて貼ったのは、アルタミラ洞窟壁画のとなり。見方によるが人類最初の絵と最後の絵ともとれる。
ところで 37 話「煙草」に出てくるのってどう見ても煙草じゃないよな…。幻覚見えてるし。写真に残っていた家族というのはやはりこれの (遵法とは限らない) 栽培で生計を立てていたのだろう。というかここが日本だとするなら普通に違法だぞ…終末世界に警察なんていないのでいいけど。未成年の少女に酒飲ましたり幻覚見えるもん吸わせたり、ほのぼのした空気だから麻痺してるけどわりとエグい作品なのだ…。
久々にして最後のサブキャラが登場する 39 話「忘却」。日記をつけて覚えておくチトと忘れっぽいユーリとで何度も繰り返されてきたのが忘れることの話。第 6 基幹塔にいる、頭に三角形のシンボルをつけた人工知能は最後のサブキャラだけあって物語の核心に近いことを喋る。
自由とはそんなにもいいものでもないですよ
どこにでも行ける自由を得て知るのは本当に行きたい場所がどこにもないという事実です 忘却のない永遠がどのようなものかわかりますか
私たち 誰かに会うとよく何かを頼まれるね
特に終盤のユーリは非常に鋭い。
社会の利害とは無関係な場所にいるという点で旅人と神は似ています
だから頼みたくなるし …祈りたくなる
人工知能は少女終末旅行という作品で直接死が描写されていてチト、ユーリと意思疎通した唯一の存在である。爆破された解体ロボットをどう捉えるかにもよるが…。
というかつくみず先生のあとがきがすべてを語ってないか?
人間は不変や永遠に憧れる一方で忘れることに癒やされていると思います。
41 話「吹雪」。
すっかり雪に埋もれてるな…
昔のことがこんな風に雪に埋もれて見えなければ…ちーちゃんも考えすぎて余計なカロリー使わなくてすむんじゃない?
埋もれても雪はちゃんと溶けるよ
42 話「宇宙」では漢字のある文明がロケットを使って外宇宙に進出したことが示唆されている。1 と 2 は途中でロストしているが 3 はどこまで行ったか不明。放棄されているのが 4。3 号機がどこかの星に辿り着いている可能性も…。どうだろう、船内は少女終末旅行どころか北斗の拳よりひどいことになってそうだが…。ちなみに 42 という数字はアメリカとかのパソコンオタク界では 「銀河ヒッチハイク・ガイド」において「生命、宇宙、そして万物についての究極の疑問の答え」としてやたら崇められている 数である。そして詳しい事情は知らないが くらげバンチ連載版では最終話の付番は 42 話である ことがわかった。
43 話「図書」
大量の本がある図書館で、生きがいである本を集めること、そして誰かが何かをなすことについて考えるチト。
いつかすべて終わると知っていても何かせずにはいられない……
そういう何かしたいって気持ちの源みたいなものが心の中心にあって それが全部つながっているような…
…そして その長い長い連なりの最後に 私たちがいるんだろうか……
先程も書いた 44 話「喪失」。4 が 2 つ重なっているのは、乗り物を失うことが死であること、くらげバンチ版の 39 話は安直だけど Thank you とか?
最終話にも、謎の巨大ブロックにさかなとともに描かれたシンボル、海に沈んだ像、都市を横から見るそばの 人骨 と 生物災害マーク。そして、チトとユーリの眠っていた場所の壁には真円と直線のシンボル。同心円がふたつ……。
じつは少女終末旅行、あれだけ廃墟があってわりと最近 (ふたりがそこそこ小さいころぐらい) まで戦闘があったにもかかわらず死体や人骨のたぐいが一切映っていない。作風と言ってしまえばそうかもしれないが人口密集地だったとは思えないほど見当たらないので不気味ではある。それにもかかわらず最終話では人骨が出てくる。さらにバイオハザードマーク。生物災害どころか生き物なんてごく少数の人間とエリンギしかおらんのだが、エリンギがヤバい生物ということだろうか。まあ燃料や火薬類を食ってしまうのは確実にヤバいのだが、外にはもうちょっと人間がいたりするのかもしれない。
シンボルの正体
いろいろと世界観設定が何が何だか分からないところがあるんだが、同心円が特徴的なあのシンボルが結局なんだったのかはある程度推察できそうなので考えてみる。あのシンボルにはおおまかに 2 つ種類があって、円の中に三角形があるものとないもの。三角形タイプは神、もっと広く言えば信仰の出てくる場面で登場することが多く、円タイプは機械と一緒に出てくることが多かった。その表現も多様で、壁やボンベには印刷・塗装で塗られているだろうし、自律機械はアニメの演出なので物理的なものではなさげ。人工知能は立体映像。博物館の絵。碑の彫刻。金属かなんかでできていたた寺院のもの。人工知能は三角形だったが神の成り損ないを自称しており、人間と機械の仲介役を担っていたという。おそらくあのシンボルは機械のための言語か何かだろう。とくに三角形タイプは宗教的な意味合いもありそう。わざわざただのシンボルが信仰されるようになったのはなぜか。文明が廃れて機械に干渉できる文様が尊ばれるようになったとか。それでいえばヌコやエリンギも電波を発したり、ある程度機械に干渉したりできる。
謎
おれの脳ではわからん。
- 最終話のラストのラストでチトとユーリが寝てたところの壁が剥がれて (るように見える) 例のシンボルが見えてる
- 10 話「あんなのただの石像じゃん」最終話「…それは?」「ただの黒い石みたい」この会話が対応してるように見える
- 10 話も最終話も暗闇が出てきてその後明るくなる (最終話で夜が明ける)
- 神は死後の世界を明るく照らしてくれる
- じつはあのシンボルは墓標説
- 死体がないのもあれに変わってるから説
- 都市に死体が墓標になるシステム (機械) 的なのがある説
- 遠景の骨はシステムの範囲外なので残ってるのでは
- エリンギ「我々は生きている人間を食べたりはしない…」
- つまり死んだ人間なら食うのかお前らは!!
- 「現在生きている人間は君たち二人しか知らない」
- 飯にもならないはずの人間についてそんなに知っているのか、よほど暇でいらっしゃるのかな
- 最上層にエリンギが来ることになるが、彼らが最上層を観測してない理由がそもそもわからないのでなんとも
- 寺院の「3 人の神」はカメラに残っていた動画の女の子 3 人じゃないか?
- 髪型がまったく合わないので違いそう
この辺を考察していると (というかカナザワの推測の変形になるが) 文明の崩壊は段階を踏んで進んでいたことがわかる。
- 仮名文字と漢字を交ぜ書きしていた時代。科学力の絶頂でありロケットや人工知能、自律機械、チトたちの時代につながる都市インフラの開発なども行っていたのだろう。技術的には西暦 2020 年から考えるとちょい未来だと思われる。早くて 2100、まあ 2500 年ぐらいかも。アニメ 12 話のアニオリ描写からおそらくここの末期で世界規模の戦争が起きている。大きな絵から考えるとこの戦争あたりであの宗教が生まれていそう。同様にアニメからは戦争で電磁波爆弾という兵器が使われたらしいことがわかるが、これがヌコを見つけた大穴の成因かもしれない。彼らは電磁波で交信するので残留してる電磁波に惹かれて群れからはぐれたとか。少なくとも、大穴の中にも武装があるので一回穴が空いたあと復興してまた戦争したのだろう、というのはチトが言っていたことである。
- 仮名文字を崩した文字が使われていた時代。1 の時代からかなり経過し、戦争によって文明が衰退している。今までの生活は戻ってこないが、人々はブラックボックス化したインフラを利用してどうにか生きていた。寺院の「今から 400 年前」という解説文からして戦争らへんに宗教が生まれて少なくとも 400 年以上はこの期間になる。そのへんの寺院に解説をつける余裕があるということは、この時代のはじめは本編の時間軸ほど荒廃していなかったということでもある。最終話で都市の残骸とともに水中に沈んでいるエリンギ像もその説を補強している。35 話で映り込んでいるアルタミラ洞窟の解説が 19000~11000 年前と 2020 年に言われる説明から 1000 年ずれててかつ漢字が使われているので、戦争が終わってからしばらくのあいだ漢字が残ってた可能性もある。どうにか生きてる状態なので例によって戦争が起こる。そして戦争でついに人類がほぼ全滅したのが本編の時間軸だろう。チトの書く文字は微妙に石碑や墓のと異なるのだが、チトの文字が正確でないのか時代で変化したのは不明。まあ本編が西暦 3200 年代なので文字の形状ぐらいかんたんに変わってしまうだろう。
まとめ
少女終末旅行アニメ第 2 期ください。マジで